足指の痛みやしびれの出る病気や障害は様々で、治療活動においても、たくさんの症例に遭遇します。例えば、代表的な疾患に外反母趾・内反小趾・モートン病などがあります。また、足の指の痛みやしびれを起こす障害を誘因する足の姿勢異常として開張足(かいちょうそく)や浮き指があります。この様な疾患や障害に悩む方に非常に多く遭遇します。
このページでは、足指に痛みを起こす引き金として問題となる開張足や浮き指の基本情報と、足指の痛みやしびれを引き起こす代表的な疾患や障害を取り上げ、その原因や症状を紹介します。尚、足の親指(母趾)に痛みやしびれを起こす疾患については足指付け根が痛む・腫れる〜外反母趾と類似疾患の見分け方のページをご覧ください。また、足の小指の痛みを起こす疾患については足の小指付け根が痛む〜内反小趾・バニオネットのページをご覧ください。
※ このページに掲載中の病名:
開張足・浮き指・モートン病・ハンマートゥ・マレットトゥ・クロートゥ・
フライバーグ病(第2ケラー病)・前足根菅症候群・中足骨疲労骨折
コラム担当:秋元接骨院院長・柔道整復師・
フットアジャストセラピスト 秋元 英俊
画像提供元:笠原接骨院 笠原 巌、秋元接骨院
※画像や内容の無断転用を禁じます。
開張足(かいちょうそく)は、足の横アーチが扁平化して足の甲(中足〜前足)が扇状に広がった状態をいいます。
医学的には足の5本の中足骨の開張角(第1中足骨の長軸と第5中足骨の長軸とで成す角度)で定義されており、正常平均値が25度、30度を超えると異常値とされています。
足の横アーチが広がると「足指の付け根の負担が大きくなる」、「足指の付け根の裏に胼胝や魚の目が出来る」、「足指の付け根を通る固有底側趾神経を圧迫する」などの障害が起こりやすくなり、モートン病、中足骨頭部痛、足底胼胝障害、中足骨疲労骨折などを引き起こす原因ともなります。
足の横幅が広がり、足の横アーチが扁平になります。また、母趾の付け根や小趾の付け根の骨の膨らみが靴に擦れて痛みや腫れが出る、足指の付け根の裏側に胼胝や痛みが出る、足指がしびれる、足の甲が痛むなどの症状が出ることがあります。
浮き指、外反母趾、内反小趾、外反扁平足などに伴って発生するものがほとんどです。また、中足骨の骨折やリスフラン関節の損傷による骨格の変形で開張足になる場合があります。
開張足の治療の基本は横に広がった中足を専用サポーターや包帯などで圧迫固定を施行することや、リハビリとしてタオルギャザーなどが推奨されています。
※ 開張足の詳細は足の幅が広がる横アーチ扁平・開張足のページをご覧ください。
浮き指は立っているときや歩いているときに足指が接地しない状態をいいます。
本来、立っているときは足指、足指の付け根、踵(かかと)がバランス良く接地し、身体がふらつきそうになると足指で地面をつかむように踏ん張ります。また、歩行時は踵から接地し中足(ちゅうそく)から足指まで、足全体を使った煽り運動(あおりうんどう)を行います。しかし、浮き指では足指まで使い切らないために身体が不安定で、歩幅が狭く推進力が無い歩行となります。また、浮き指の場合、足の衝撃緩衝機能である足のアーチを十分に利用できないために足の痛みやしびれなどの原因となります。
上の画像の様に浮き指を生じた足をフットプリントなどで観察すると、足指の接地が弱い、若しくは全く接地していないのが分かります。従って、浮き指の場合は正常に足指が使えている人よりも踏ん張る力が弱く、身体をしっかり支えることが出来なくなります。また、足指が浮き上がっているために足指の付け根に掛かる刺激や圧力が大きくなるために足裏の指の付け根に胼胝(たこ)や魚の目が出来やすくなります。さらに、足指が上に向いていると足裏の筋肉は引っ張られた状態のままとなっているので、足裏の筋肉や腱が痛くなったり(足底筋膜炎)、踵が痛くなったり(踵骨骨底棘)などの足のトラブルが多くなります。
浮き指で足の踏ん張りが弱いと、身体の不安定さを身体の筋肉で補います。従って身体の筋肉の負担が大きく、ふくらはぎや脛(すね)が硬くなったり、肩こりや背中の痛みなどが起こる方も多く見られます。
浮き指は足の生活習慣病といえます。特に骨格の基盤を形成する幼児期は、浮き指を発症する重要な分岐点となります。 自立歩行を始める1歳時から徐々に足のアーチが形成され始めます。そして歩行が安定し、力強く駆け回ることができるようになる3歳〜6歳の間に足のアーチが著しく成長します。従って、この3歳〜6歳の間が非常に重要な時期となります。この時期に、足指の動きを抑制するような靴を履かせたり、外は危険だからと家の中で閉じこもるような生活を続けていると、足のアーチの形成が悪くなるため浮き指を発症します。
一方、成人でも「合わない靴を履き続ける」、「靴下で足の指先の自由度を抑制する」、「車や自転車など乗り物の活用が多く自分の足で歩く時間が非常に少ない」、「家の中で裸足で歩くことがほとんど無い」など、この様な環境にある場合は浮き指を発症しやすい状態と言えます。特に「合わない靴を履き続ける」ことは、浮き指予防の大敵です。つま先が細くて足指の動きが抑制される靴はもちろん「靴が小さい」、「靴が大きい」なども浮き指発症の原因になります。靴が小さければ足指はつま先に押し付けられて縮こまった状態になるのは想像できると思います。一方で靴が大きくても、歩いているうちに足は靴の中で、つま先方向にずれてしまい、カカトがブカブカと隙間が空いた状態となります。即ち、足指は靴先に押し付けられて縮こまった状態となります。この様な状態を毎日繰り返していると、足指で踏ん張る力が弱まり、足指でグーを作るように握る動作もできなくなります。
浮き指の改善は、足指のリハビリ、足指の姿勢補正の2つの方法を組み合わせて施行することが基本です。効果的なリハビリとして足指によるグーパー運動とタオルギャザーがあります。また、浮き指を改善するためのサポートとして、DSIS機能の付いたインソールの活用などが有効です。
※ DSIS(Dynamic Shoe Insole System)
NPO法人オーソティックスソサエティーが考案した「DSIS」(ダイナミックシューインソールシステム)は、人の足の動きをこの中敷きで調節し、足裏にある「3つのアーチ」をサポートすることが基本となっています。これにより足の姿勢が改善され、足指がしっかり使えるようになり、歩行がリズミカルで足が疲れにくい動きに調整されます。
DSISやNPO法人オーソティックスソサエティーに関する詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
足指や足指の付け根に痛みやしびれが起こる疾患の一つにモートン病があります。
モートン病(Morton's disease:モルトン病:Morton's metatarsalgia:Morton's neuralgia)は、足指の付け根の足底面や足の中指(第3趾)と薬指(第4趾)辺りに神経痛や、しびれを起こす疾患です。
この病気はアメリカの外科医トーマス.G.モルトン(Thomas George Morton)が1876年に記載した中足骨痛を来す疾患の中で紹介されたものです。医師によってはモートン神経症やモートン神経腫などの病名で説明される場合がありますがモートン病と同じ疾患を意味します。
この病気は足指の知覚を司る底側趾神経の損傷により起こる神経症で、第3趾と4趾の間の底側趾神経に発症するケースが最も多く見られ、次いで第2趾と3趾の間の底側趾神経に起こる症例が見られます。その他の4趾・5趾間や1趾・2趾間の症例もあるようですが極めて稀です。また、20〜50歳頃の女性に多く、男性の症例は比較的少ないようです。
3趾・4趾間の底側趾神経の損傷の場合は、3趾・4趾のしびれや痛み、第3・第4中足骨頭足底部(足の中指と薬指の付け根の足裏側)の灼熱間や痛みが有り、つま先立ちやしゃがみ込み、あるいは歩行時の蹴り返しなどで、その疼痛が増悪します。
足指の付け根の足底面で第3中足骨頭と第4中足骨頭の間に顕著な圧痛を認め、さらに同部に腫瘤を触れることがあります。また、同部を軽く叩打すると足指にピリピリやムズムズするような感覚が起こるチネル徴候(Tinel's sign)と呼ばれる症状が出現することもあります。
モートン病は底側趾神経の損傷により起こります。その神経損傷を起こす原因として窮屈な靴やヒールの高い靴などによる神経の圧迫挫滅、あるいは長時間の歩行やランニング時の、蹴り返しの反復による神経線維や周囲組織の過伸展などによる損傷などが挙げられます。また、その発生頻度が女性に多いのも特徴です。
底側趾神経の直ぐ背側には深横中足靭帯が存在するため、足指が上(背側)に曲げられる動作で、その靭帯が底側趾神経を圧迫するように密着するため神経線維や周囲を覆う繊維組織が擦れるように損傷します。従って、足指が靴先に押し付けられて指先が上に持ち上がった状態になっていると神経組織を挫滅しやすい環境にさらしていることになります。浮き指やハンマートゥ、開張足など、足の横アーチが広がって扁平になっていると、さらに痛めやすい状況にあると言えます。また、窮屈な靴やハイヒールで長時間立ち通しになる仕事をしている場合、持続的に底側趾神経が圧迫され続けることとなり、神経線維への血行が阻害され、神経虚血による障害を生じた結果モートン病を発症するケースも報告されています。
治療は整形外科や足の外科が専門となります。また、医師の管理下で接骨院や鍼灸院による理学療法が施行される場合もあります。
先ずは指先を圧迫するような靴を止めて、負担を掛けないようにすることが大切です。指先が窮屈な靴を履いていないと思われている方でも靴が緩すぎたり、足先が靴の中で前にずれやすい靴を履いていると、歩行中に足先が靴の先端に押し付けられて窮屈な靴やハイヒールを履いているのと同じ状況になってしまいます。その様な場合は、よりフィットする靴に変えるか、インソールや足底パッドなどで調整する必要があります。
浮き指、扁平足、開張足、外反母趾などモートン病の誘因となる足のアライメント異常がある場合は、足底板やサポーターなどの活用により足の姿勢を補正します。
医師による薬物療法ではビタミンB12製剤の投与やステロイドの注射が行われることがあります。理学療法では血行促進、神経修復反応の促進を目的とした温熱療法や低周波療法などが行われます。また、足のアライメントを改善するリハビリが指導されることもあります。
上記の様な保存療法で改善されず著しい症状が残存する場合は、整形外科による手術が選択されます。
手術は底側趾神経の障害部分から抹消の神経切除術が施行されます。術後は中足骨を支える中足パッド付きの足底挿板を着用した状態で荷重歩行が許可されます。この足底挿板は少なくても2〜3ヶ月程度は着用するよう指導されます。
予後は、保存療法で次第に回復するケースや手術療法を施行した例では、比較的良好な経過となる症例が多いようです。一方で治療開始が遅れたり、従事する仕事の作業内容や足のアライメント異常などの環境要因により慢性化するケースでは再発率が高くなります。
足指が縮こまるように曲がり、胼胝(たこ)や魚の目、足指の付け根の痛みや足裏の痛みを起こす疾患があります。これらの症状が出る代表的な足指の変形性疾患には、ハンマートゥ(hammer toe:ハンマー足趾)、マレットトゥ(mallet toe:槌趾)、クロートゥ(claw toe:鉤爪趾)があります。
これらの足指の変形は何れも足指の付け根が上(背側)に向いて浮き上がり、趾先は下に向いて曲がっています。
しかし、それらの変形を詳しく見ると、それぞれの変形の形状に特徴があり、またその根本原因もそれぞれ違いがあります。そこで先ずはハンマートゥ、マレットトゥ、クロートゥを個別に解説します。
足の人差し指(第2趾)〜小趾(第5趾)のMTP関節の伸展(上に向かって曲がる:背屈)、PIP関節が屈曲(下に向かって曲がる:底屈)し、DIP関節が伸展(背屈)する変形です。
原因はヒールの高い靴や足先が窮屈な靴の圧迫によるものがほとんどです。また、外反母趾に合併して起こるものも多く見られます。その他に神経障害による虫様筋や骨間筋の麻痺を原因として起こるものもあります。
第2趾が最も多く見られ、2趾単独で起こる場合と、3趾や4趾を含めた複数の足指に起こるものも見られますが、第2趾単独で起こっている症例がほとんどです。これは第2趾が母趾よりも長いギリシャ型の足に発症しやすいことによるものです。
※ MTP関節 metatarsorphalangeal joint
和名:中足趾節関節。足指の付け根の関節で、母趾から小趾に向かって1〜5の数字で呼ばれています(例:第1中足指節関節)。
※ PIP関節 proximal interphalangeal joint
和名:近位趾節間関節。足指の付け根の先にある足指の中間の関節で母趾には無い。
※ DIP関節 distal interphalangeal joint
和名:遠位趾節間関節。足指の最も先にある関節。
ハンマートゥで見られる症状にはPIP関節の背面の胼胝や魚の目、あるいは中足骨の骨頭足底面の胼胝や魚の目と中足骨の骨頭やその近傍の疼痛、足指先端の胼胝などが見られます。
外反母趾と合併しているケースでは、外反母趾の悪化に伴い、外反した母趾の上に第2趾が乗り上げてMTP関節の脱臼や亜脱臼に至るものもあります。
治療は整形外科が専門となります。
変形した関節が他動的に容易に矯正できるものでは、徒手矯正を繰り返し施行します。また、足底挿板やパッド、インソールによる足のアライメント補正、足指が圧迫されない靴の指導などが行われます。一方、変形した関節が固まって徒手的に矯正が不可能なものや、徒手矯正が出来ても再び変形姿勢に戻ってしまうものでは手術が行われます。手術は長趾屈筋腱を背側へ移行する長趾屈筋腱背側移行術、関節形成術、関節切除術、短趾伸筋腱を切離し長指伸筋腱を延長する腱延長術などが症状や病態により選択されます。
マレットトゥは足指の最も先端寄りの関節(DIP関節)が屈曲する変形です。ほとんどの症例が靴による足の指先の圧迫が原因で起こります。また、足指の突き指で足指を伸展する長趾伸筋腱の断裂や、その腱が付着する骨端(末節骨近位端)の剥離骨折により起こる外傷性の場合もマレットトゥを起こします。
足指の中でも比較的長さのある足の人差し指(第2趾)や中指(第3趾)に発症するものが多く見られます。
長期間の指先の圧迫で起こったマレットトゥで見られる症状には、DIP関節や足指の先端の疼痛、DIP関節の背面の胼胝形成などが挙げられます。一方、外傷性のマレットトゥでは、末節骨近位端部の圧痛、腫脹、皮下出血が観察され、レントゲンやエコー観察で、末節骨近位端の剥離骨折像や腱の断裂を疑う画像が見られます。
治療は整形外科が専門となります。
変形した関節が他動的に容易に矯正できるものでは、徒手矯正を繰り返し施行します。また、胼胝部分へのパッドによる保護や、足底挿板やインソールによる足のアライメント補正、足指が圧迫されない靴の指導などが行われます。一方、変形した関節が固まってしまい徒手的に矯正が不可能な場合、あるいは足関節の背屈動作の時だけ足指の変形が突然出現し、足関節を元に戻すと足指の変形も戻るタイプの場合、これらの症例では手術が行われます。手術は関節形成術、長趾伸筋腱を背側へ移行する長趾伸筋腱移行術、骨頭部切除術などの中から症状や病態により選択されます。
尚、外傷により生じたマレットトゥでは、テーピングやシーネによる固定を4〜6週施行します。固定除去後顕著な変形が残存するようであれば手術による矯正が選択されます。特に長趾伸筋腱の断裂では、断端が丸まって再生されないことが多いので初めから手術による縫合を選択することが多くなります。
足の人差し指(第2趾)から小趾(第5趾)までDIP関節とPIP関節が屈曲(底屈)変形し、MTP関節が伸展(背屈)した状態で亜脱臼を生じ、足指が先端を前方に向けて縮こまるように固まっている変形です。この変形は脊髄神経の損傷・二分脊椎や進行性神経性筋萎縮症(Charcot-Marie-Tooth病)などが原因で発症する足内在筋の神経麻痺によるもの、リウマチ、あるいはその他の関節炎を起因とするもの、ハイヒールを長時間かつ長期間履き続けることによるもの、その他何らかの原因で関節の屈曲拘縮や長趾屈筋の拘縮を生じた場合など、様々な原因が上げられる上に原因のはっきししないものもあります。
脊髄神経や下肢の末梢神経障害によるものでは、足指の運動機能に係る虫様筋(ちゅうようきん)や骨間筋(こっかんきん)が、神経麻痺により機能しなくなって、この様な変形を起こします。一方、リウマチや関節炎で関節拘縮を生じたものや、ハイヒールを長期間履き続けることにより足指が押し付けられ続けた結果による長趾屈筋の拘縮や過度の緊張により生じるものがあります。
尚、神経障害によるものでは、クロートゥの他に凹足(足の縦アーチが異常に高くなる)や内反尖足(バレーのつま先立ち姿勢のような形に固まる)などを合併しています。
疾患の根本原因である神経の治療は脊椎外科や整形外科が専門で、足の変形に対する治療は整形外科が専門となります。足の変形に対しては手術による変形の改善と、手術後の装具療法が施行されます。
成長期に見られる足指の付け根の痛みを発症する傷病の一つに骨端症(成長軟骨の障害)として起こるフライバーグ病があります。
フライバーグ病(Freiberg's disease:第2ケラー病:フライベルグ病)は、足の人差し指(第2趾)や、足の中指(第3趾)の付け根辺りに圧痛(押すと痛い)、腫脹(腫れている)、荷重時や歩行時の痛みが起こる疾患です。
病気の原因は中足骨の先端(骨頭)に生じた骨端症です。骨端症とは成長軟骨に起こる障害のことで、フライバーグ病の場合は、中足骨の骨頭の成長軟骨部分が外傷や炎症、循環障害など何らかの因子により損傷し、やがて無腐性壊死という病態に陥って骨頭の変形に至ります。
この病気はアメリカの外科医フライバーグ(Freiberg Albert Henry)が1914年にinfraction of second metatarsal head(直訳で第2中足骨頭不全骨折)を報告し、フライバーグ病とよばれるようになりました。その後1920年にドイツの放射線学者ケラー(Köhler Alban)が本症の詳細を報告したため第2ケラー病ともよばれています。
フライバーグ病の好発部位は第2中足骨頭で、次いで第3中足骨頭の症例が多く見られます。また、比較的稀に第4中足骨頭に発症することもあるようです。この疾患は女性に多く見られ、罹患時期(最初の受傷時期)は10代であることも特徴です。
症状はフライバーグ病を発症した中足骨頭に一致した圧痛、歩行時の踏み返し動作における疼痛、患部を中心に足背部の腫れを生じます。特に走る、跳ぶなどの動作では疼痛が増悪します。また足指の底屈(下に曲げる)動作が制限され、足指を浮かせている姿勢が観察されます。
レントゲン検査では中足骨頭の一部に吸収像(部分的に骨が透けて見える)や骨の離断(ひび割れ)、骨頭中央部の陥没、骨頭の扁平化あるいは遊離骨(欠けた骨が本体から遊離した状態)の存在、骨棘形成(骨の断端にトゲのような骨変形)など、フライバーグ病の病期により骨頭の形状変化が観察されます。
診察や治療は整形外科が専門です。
発症初期は中足を支えるパッドを装着した足底挿板(治療用のインソール)を処方して経過観察します。また、痛みや腫れがひどい場合はギプスなどの固定装具で症状が軽くなるのを待ちます。
骨頭の壊死や変形、遊離骨を生じている場合は手術が選択されます。
予後は変形性関節症に至ることが多く、特に女性の場合は発症が10代に起こっていても症状が軽いまま回復し、産中・産後、あるいは更年期以降の女性ホルモンバランスが乱れる時期に変形が進行して症状が再発するケースがあります。従って、できる限り早期から適切な処置を受け、インソールやサポーターの使用やリハビリなどで変形が進行しないように予防することが大切です。
足指の付け根に痛みやしびれが出る疾患の一つに前足根菅症候群(ぜんそっこんかんしょうこうぐん)があります。
前足根菅症候群は、ハイヒールや編み上げの靴を履いたときに足の母趾(第1趾)と人差し指(第2趾)の間にしびれや痛みの出る疾患です。
主な原因は足関節の前面を締め付ける靴を履き続けた場合や、足関節の前面に外傷による腫れや循環不全によるむくみを生じた場合、あるいは長時間の正座を作業中や日常に強いられる環境などにより起こるケースが見られます。
前足根菅症候群は足関節の前面にある下伸筋支帯(かしんきんしたい)で深腓骨神経が絞扼されることで起こる神経の損傷です。
下伸筋支帯は靭帯の様な線維組織で、足の前面を通る神経、血管、腱などをバンドで押さえているように支持しています。この神経、血管、腱の通る空間のことを前足根菅(ぜんそっこんかん)と言います。この前足根菅の内部や近傍で損傷や炎症による腫れ、あるいは腫瘤や浮腫みなどを生じて、もしくは物理な圧迫により、前足根菅内の内圧が上がる障害が起こると、この中を通る神経が圧迫されてしびれや痛みが発生します。
症状は足の甲から第1趾と第2趾の間のしびれや感覚麻痺、ピリピリした痛みなどが現れます。また、この症状は安静時に強く表れ、運動時は症状が和らぐこともあります。
圧痛は足関節の前面下方の下伸筋支帯に一致する部分に有り、またその部分をしばらく圧迫して解放したときに足の甲から足指(母趾、2趾)に至るピリピリした感覚を誘発するチネル徴候(Tinel's sign)が観察されます。
治療は整形外科が専門となります。靴や正座など物理的な外部因子が原因のものは、消炎鎮痛剤、向神経性ビタミン剤などが処方され、経過観察する方法が一般的です。また、ステロイド剤と局所麻酔剤の混合液を患部に注射する場合もあります。
接骨院では整形外科医の依頼で電気治療やマッサージなどの理学療法を施行することがあります。
圧迫の原因となるハイヒールや紐靴は履かないように指導されます。また、正座など患部を圧迫する要因になる姿勢や作業も変更する必要があります。
外傷や炎症など内部因子で発症したものでは投薬や注射などで経過を観察しますが、保存療法で改善されないものや神経圧迫症状が顕著で重度の症状が観察されるものでは手術が選択されます。
手術は下伸筋支帯を切離して、圧迫の原因となっている外傷や炎症により生じた線維組織や腫瘤などを切除します。
保存療法で改善される症例が多く、手術後の再発も少ないようなので比較的予後良好な傷病といえます。
足指の付け根に痛みの出る外傷に中足骨疲労骨折があります。
中足骨の疲労骨折は第2〜第4中足骨に多く見られる外傷です。疲労骨折は一度の外力で骨折を起こすのでは無く、ランニングやジャンプなどの繰り返し、あるいは長時間休まずに歩き続けるなどが原因で、中足骨が金属疲労を起こしたようにひび割れる骨折を生じます。
症状は足の甲に歩行時や荷重時の痛みが出現し、中足骨の骨折部分に限局した圧痛や、圧痛部位を中心に足の甲が腫れるなどが観察されます。中足骨の骨頭(先端)に近い所で疲労骨折を生じると足指の付け根に同様の症状が出現します。
レントゲンなどの画像検査では、骨折の状態により中足骨に明瞭な亀裂が描出されるものもありますが、画像に明確に現れないこともあります。但し、画像で描出されない症例でも骨折の修復過程で、数週間後に折れた骨を繋ぐ仮骨が出現することで疲労骨折を生じていることが判明することもあります。
治療の基本は運動の中止と固定による患部の安静保持となります。一般的に1ヶ月半〜2ヶ月ぐらいの安静で治りますが、完全に治るまで我慢できずに負担を掛けたり、発症から骨折判明まで長期間経過しているものでは、骨折の癒合が進まず遷延化することもあります。この様なケースでは癒合が完了せず偽関節(ぎかんせつ)と呼ばれる後遺症に陥ることがあります。従って、この様な長期化が考えられる症例では手術により癒合を促す方法が選択されます。
尚、一度完全に治っても運動の再開により再び疲労骨折を起こす場合は、浮き指、外反母趾などの足のアライメント異常が誘因となることがあるので、その場合は再発防止のために足のアライメント異常を改善するリハビリやサポート装具の使用、足底板やインソールの処方などが施行されます。
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